[感想]「ルポ超高級老人ホーム」/甚野博則:入居金3億円越え!秘密のベールに包まれた超高級老人ホームの実態に元週刊文春記者が迫る衝撃のルポルタージュ

読書

甚野博則さんの「ルポ超高級老人ホーム」という本を読みました。

約4億7000万円。「サクラビア成城」という老人ホームの入居一時金が最も高い部屋の金額です。本作はそんな超高級老人ホームの実態に元週刊文春の記者の著者が迫っている一冊です。

個人的な感想としては超高級老人ホームでのサービスや内観、そこで生活する人々や働く人々を含め実態をユーモアを含め書いている読み物として読む分には面白く、なかなか内部を知り得ない施設の実態に迫っている点は意義深い一冊だと思うのですが、後半は期待していた分「んっ?」と思う内容が多く微妙、、、という感じでした。

まず、微妙だった部分は本作の第四章の悪徳施設と言われる施設への潜入取材の章の情報がフワッとしていたこと、小見出しの引き込み感の割に内容が薄かったこと、証言の信頼度の低さ(というか、その情報が嘘っぽく感じる、感じさせてしまっている)点でした。沢山のスクープを撮っている週刊文春の記者さんでさえ、真実をつかめないくらい超高級老人ホームは厚いベールに包まれているのだろうなとも感じましたが、面白そうと感じて購入を決めた一因だったため、非常に残念でした。

一方良かった部分は、入居金が数億、安くても数千万円の浮世離れした超高級老人ホームの設備やサービスを知ることができたこと、いくつになっても一部の人間にはある醜悪さや傲慢さなど人間の澱のような部分が垣間見えたこと、良いように言えば歳を重ねるほど人間らしくなることを再認識できたこと(予め言っておきます、記事の中で「クソ」というワードを多用しております笑。ご了承下さい)、富裕層と言われる人達も人生の終焉に向けて自分自身の存在を確認し日々生きているという事実を知れたことなどでした。

全体で見ると期待外れ感は否めませんでしたが、それ以上に老後や老いについて考えるきっかけになったり人生観への気付きがあり、個人的には読んで良かったと思いましたあくまで私個人の感想ですが、きっと皆さんにも今後の人生について考えるきっかけや学びをくれる一冊だと思います。

では、詳しく本作の内容を紹介していきます。

~作品情報~

題名:「ルポ 超高級老人ホーム」

著者:甚野博則

出版:ダイヤモンド社

ページ数:252ページ

目次

  1. 入居金3億円越え!秘密のベールに包まれた超高級老人ホームの実態に元週刊文春記者が迫る衝撃のルポルタージュ
    • 私が読んだ動機
    • こんな人にオススメ
    • 作品説明
    • 超セレブが選ぶ「終の棲家」の全容がスゴすぎた!情報の少ない超高級老人ホームの実態に迫った社会的意義深い一冊
    • やりたい放題?超高級老人ホームの居住者の異常性、傲慢さ、害悪さに困惑間違いなし
    • 悪徳施設はの潜入取材の文章は内容の密度と信頼性が低くフワッとしていて微妙……
  2. まとめ

1.入居金3億円越え!秘密のベールに包まれた超高級老人ホームの実態に元週刊文春記者が迫る衝撃のルポルタージュ

私が読んだ動機

  • 帯の「ほんまに監獄みたいやと思います」という文言や入居金3億円超えなどのフレーズに惹かれたから
  • 超高級老人ホームの設備やサービス面に興味が湧いたから
  • 人間の黒い部分が書かれていそうで気になったから
  • 悪徳施設でどういったことが行われているか気になったから

こんな人にオススメ

チェックポイント
  • 超高級老人ホームの実態について知りたい人
  • 老いや人生観について考えている人、考えたい人
  • 超高級老人ホームで起こったトラブルや事件、隠蔽などに興味がある人

作品説明

数億円の入居金を支払い、至れり尽くせりのサービスを受ける、超富裕層が選ぶ「終の棲家」――超高級老人ホーム。

夢のような高齢者の桃源郷は本当にあるのか、金さえあれば幸せに暮らせるのか、超高級老人ホームの「高級」とはなんなのか――。

秘密のベールに包まれた超高級老人ホームの実態に元週刊文春の記者が迫るルポルタージュ。

超セレブが選ぶ「終の棲家」の全容がスゴすぎた!情報の少ない超高級老人ホームの実態に迫った社会的意義深い一冊

この本は①超高級老人ホームの実態に迫る、②高級老人ホームの何が「高級」なのかの2つが大きなテーマだと思うのですが、第一章では超高級老人ホームの代表格「サクラビア成城」の紹介がメインになっています。

こちらの施設の入居一時金は最も高い部屋で約4億7000万円、さらに食費や諸経費で1ヶ月60万円プラスでかかるそうです。その金額に驚くのは私だけではないはずです。さらに驚愕なのは、、、

〔前略〕サクラビア成城の事業主体の担当者は、記事の中でこうも述べている。

「当方の価格に驚かれる方はいらっしゃいません」

甚野博則「ルポ超高級老人ホーム」ダイヤモンド社、24頁

えっ、金額に驚かないって嘘でしょ!?って感じですよね?そんな施設のハード面(設備や内観など)、ソフト面(サービス面)を紹介しているわけですが、そのなかで特にすごいなと感じた内容がこちらです。

〔前略〕レストランスタッフも自社スタッフであるため、好きな料理から趣味、性格まで全て把握しているというのだ。お客様相談室の主任、石塚氏はこう話した。

「お茶を出すタイミングから、お好きな氷の数まで言われなくても全てわかっています。ですから、今日はいつもより食が細いといったことにもスタッフが気付き、そこから医療や介護に繋げていくことができるという点が強みです」

甚野博則「ルポ超高級老人ホーム」ダイヤモンド社、49,50頁

好みの氷の数まで把握するってスゴくないですか?そして、そういったことから入居者の健康状態に繋げる。他のサービスも設備面も異次元すぎて非常に興味深かったです。そもそも数が少なくかつ一般市民には縁のないであろう厚いベールに包まれた超高級老人ホームの概要に触れる事ができる本作は知見を広げることができ意義深い一冊だと思いました。

やりたい放題?超高級老人ホームの居住者の異常性、傲慢さ、害悪さに困惑間違いなし

第一章の超高級老人ホームの内容だけ聞けば住めるなら住みたいなあとなるかもしれませんが、勿論そんな単純なことではなさそうです。

入居金が億越えの超高級老人ホームに住む利用者やそこで働く又は働いていたスタッフへの取材をもとに超高級老人ホームの実態や「高級」とは何かに迫っているわけですが、老人ホームを利用する方の発言や行動のなかに異常性や傲慢さ、考えの古さや怖さなどが見えて非常に興味深かったです。

一番異常性を感じたのは「中銀ライフケア熱海第三伊豆山」というシルバーマンションに暮らす高齢者を中心に話を聞く第二章です。話を聞くのは施設を取り仕切る管理組合の理事会の役員の方々。この人たちが正直醜悪で狂気じみてました💦笑

具体的に異常性を感じたのは理事会が取り組んできた問題の一つである「コロナ対策」です。この施設は賃貸型ではなく分譲型なので部屋の購入後は個人資産となります。そして、そこに常住している人ばかりではなく、別荘的な形で利用している非常住者も多い施設です。購入した居室は所有者の持ち物であり、自由に出入りしていいはずなのに、理事会メンバー主導で「非常住者が来ることを制限」し、「常住者の子供はいいが孫はダメ、一親等まで」という謎ルールまで勝手に作ってしまったそうです。強引すぎませんか?力持ちすぎじゃありませんか?自由が阻害されすぎじゃないですか?

他にも購入希望者との面談にも参加し購入を断らせるまではしなくても介入してきたり、家事は女性の仕事とするような発言をしたり、施設スタッフへの横柄な態度だったり、、、。勿論全ての施設の高齢者がそういうわけではないと思うのですが、そういった高齢者が集まる施設かつ富裕層と言われる人たちが集まる独特な閉鎖空間の世界感というかクソさというかが垣間見えて非常に胸クソ悪くなりました、いい意味で(笑)

第一章で施設の光の部分が、それ以降は陰の部分が描かれているので第一章が非常にわかりやすい前振りになっているなあと感じます。そして、超高級老人ホームはあくまで入れ物でしかないんだなと感じました、その中でどう生きるかが重要なのだと。私はそんな風に思いました。きっと皆さんも彼らの行いから学ぶことがあると思います

通常の高齢者施設でもマウンティングの取り合いやトラブルなどはあるのでしょうが、一般人がなかなか踏み入れる領域ではない「超高級老人ホーム」ならではの裏側やそこに暮らす高齢者の醜悪さのようなものを垣間見ることができる一冊、面白いと思います。ぜひ、ご自身の目でご老人達の害悪さに触れてみて下さい。

悪徳施設はの潜入取材の文章は内容の密度と信頼性が低くフワッとしていて微妙……

クソなのは一部の高齢者だけではありません。一部の高齢者施設のスタッフや施設でのひどい対応や書類などの偽装疑惑も書かれていて、それが本作の魅力の1つだと思い購入を決めましたが、正直な感想は微妙でした。それが中心に書かれているのが第四章の「老人は二度死ぬ。悪徳業者への潜入取材」で事実であれば目を疑いたくなるような施設の裏事情が書かれています。その章の前半で悪徳施設と言われる施設の現役スタッフや過去に働いていたスタッフの証言をベースに施設の裏側が語られ、その後著者が実際にその施設に潜入し真実を確かめるといった構成になっています。

具体的に微妙だと思った点は2つあります。1つは小見出しがあるのですが、その文言に対しての記事の内容が薄かったり、ふわっとしていた点です。小見出しは非常に引き込まれる文言なのですが、実際に中身を読んでみると「ん?」という内容が多く期待外れ感が否めなかったです。一部実際の内容を引用し紹介させていただきます。

某新興宗教との関わりも……

〔前略〕「今後も他の施設を見学されるんですか」

さらに、こう聞かれたため「その予定です」と曖昧に答えると、納得した様子で最後に何か質問があればと彼女はこちらに話を振ってきた。

――宗教団体とは関係あるんですか?

そう聞いた。赤山さんが、ネット上でこの会社は何かの宗教と関係があるんじゃないかと書かれていたと言っていたからだ。すると富田氏はこう答えた。

「やっぱり真理の丘っていう名前が宗教っぽい、という印象を持たれる方が多いですね。私もここに入職する前は宗教?と思ったこともあります。でも、そうではなくて、福祉とか医療とかをやっています。結構いらっしゃいますね、宗教ですかって聞かれる方。宗教ではないです。そこはご安心下さい」

甚野博則「ルポ超高級老人ホーム」ダイヤモンド社、204,205頁

対象となっている施設が宗教団体と関係があるような見出しなのに、実際は関係ないという(本当は関係あるかもしれないし、あっても言わないと思いますが…)結末で終わっている。著者に取材を受けた赤山さんという方もネットからの情報ですし、何かの宗教と関係があるんじゃないかと推測レベルですし、なんだか悪くみせようとする意図的なものを感じざるおえませんでした施設の他の裏側の話も人づてに聞いた話が多数あり信憑性が……と感じる点も多々ありました。

2つ目の微妙だと思った点は情報の信頼度の低さです。取材の内容は事実かもしれませんがそれを真実ではないように思わせてしまっている感じというか。取材を受けた方たちが嘘を言っているとは思いませんが、潜入取材ではその発言の裏付けを取るまではいっておらず、推測の域をでない内容が多かった印象でした。こちらも実際に内容を引用させていただきたいと思います。

反社会的勢力との黒い噂

〔前略〕見学の最後、この女性に「手広く介護施設を経営されているようだが、御社の経営母体は何の会社なのか」と聞いてみた。すると彼女は、こう話した。

「うちは介護施設を経営する会社です」

確かに同社は介護施設の経営が主な事業目的の企業だ。事前に調べていた会社の登記簿を確認すると、複数の介護関連企業を吸収合併して大きくなった企業だということがわかる。

前での財界関係者が言う。

「『X』(※取り上げられている評判の悪い高級老人ホームのこと)の経営母体は小さな介護施設を繰り返し買収して大きくなった会社です。同社の事実上の親会社は、不動産事業がメイン。福祉事業を手掛けている会社というよりは、福祉の名のもとに金を儲けているというイメージが強く、噂では反社会的勢力との繋がりがあると聞いたこともあります」

もちろん、そうした話は噂の域を出ない。だが、同じ話題を地元のメディア関係者に聞いてみると、具体的な反社組織の名前を出して「確かに、その組織と近い関係だと聞いたことがある」と答えたのだった。

甚野博則「ルポ超高級老人ホーム」ダイヤモンド社、216,217頁

こちらの内容は上で引用して紹介した施設と別の施設なのですが、正直、フワッとしすぎてませんか?(笑)あまり週刊誌を読んだことないのですが、こんなもんでいいんですかね笑?こういう文章を書かれると本当にそうなのか?とたとえ事実であっても疑ってしまう気持ちが私はありました「元週刊文春記者」というのも悪い方向にはたらいてしまったかも?笑

まあ、取材で明かされる施設の裏側は「えっ、ほんとに!?」と信じがたい内容ばかりなので、エンタメとして楽しむ分にはいいかなと思います。ただ、個人的には期待してハードルが上がっていた分内容が薄く、肩すかしをくらったなという感想でした

2.まとめ

本作は超高級老人ホームの実態や入居者、そこで働くスタッフの言動に目が行きがちですが(自分自身も最初はそこに注目してしまっていましたが)、今後の生き方、人生観を考えるきっかけになる一冊といっても過言ではないと思いました。なので、悪徳施設はの潜入取材の章や全体を通してみると微妙でも読んでみるとそれ以上に何か得るものがあるのでは?と個人的に思ってます

具体的に本作を読んで私が感じたことの一つが「どこで」生活するかよりも「何を」「誰と」するかが幸せに暮らしていくためには重要なのではないかということです。環境が整っているに超したことはないですが環境に依存しすぎることなく、自分の幸せは自分で考えてつかみ取るしかなくて、人に決められるものでもないなとも感じました

高齢になって(高齢故なのか?)自分の存在を確認し生きている感じはそれが良い悪いは置いておいて社会や会社に強く評価軸をおいていたからではと思う部分もあります。より豊かな人生を送るためのヒントをもらった気もしました。

そして、超富裕層だけが暮らす老人ホームという環境がそうさせるのか、そういったセレブにそういった人が多いかはわかりませんが、年を重ねようが結局いくつになってもクソみたいなこと、クソみたいなヤツはいるんだなということを感じてましたね。

それを感じたからこそ自分が今後老いていくなかでどんな風に年を取っていきたいか考えるきっかけになりましたクソみたいなヤツを見て自分はこういう風にならないようにしようという反面教師的な観点でも見られるかもしれません

こんな老人になりたくないでも良いですし、自身の老後や夢に思いを馳せるでも良いと思います。本書を読んで人生が豊かになる方が一人でも増えると嬉しいなと思います(自分が書いたみたいに書いてすみません笑)

ぜひ、読んでみて下さい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました