中野新橋の商店街。賑わっているとは言えないにこの場所に平日にも関わらず開店前から行列ができている店があります。
その名も「The Lab by YUSUKE AOKI 」。
不定期販売されるヴィエノワズリーや焼き菓子は驚くほどのクオリティー。
焼き菓子なんてそんなに大きな違いはないと思っていた自身の価値観を覆してくれました。
数百円〜1000円台で購入できるその魅力を紹介したいと思います。
目次
- シェフ紹介
- 不定期営業だからこそ生まれる焼き菓子の鮮度
- 主役は小麦と生地
- 王道のフランス菓子をあえて選ぶ
- 忘れられない「レモンと生姜のマドレーヌ」
- 商品紹介
- おわりに
1.シェフ紹介

この店を手掛けるのは、ホテルのパティスリーで活躍してきたパティシエ 青木裕介さん。
Four Seasons Hotel Tokyo at Otemachiのエグゼクティブペストリーシェフとして活躍し、2018年ヴァローナC3チョコレートコンペティション世界大会優勝など高い評価を何度も受けてきた方です。
そんなシェフが独立し、自身の名を冠して立ち上げたのがThe Lab by YUSUKE AOKI。
店舗は決して大きくありませんが、焼き菓子やヴィエノワズリーの販売だけでなく、商品開発や技術発信の拠点としての役割も持つ“ラボ”的な場所でもあります。
パティシエが技術やアイデアを発信する拠点として機能している点は、日本では比較的珍しい取り組みのように感じました。
2.不定期営業だからこそ生まれる焼き菓子の鮮度

この店は常に開いているわけではありません。営業日は不定期で、オープンはInstagramのストーリーで知らされます。
一般的なパティスリーでは、焼き菓子はある程度まとめて仕込み、数日間店頭に並ぶことも珍しくないと思います。もちろんそれは現実的な運営を考えれば仕方のないことです。
しかし、この店では事情が違います。不定期営業だからこそ焼き菓子は極めて新鮮な状態で並びます。
袋を開けた瞬間に広がるのは、油脂の重たい香りではなく、焼きたての小麦の香り。表面は信じられないほどカリッとし、 口に入れるとすっと溶けていきます。
焼き菓子というと「日持ちするおやつ」という印象を持っていましたが、この店のお菓子は全くの別物でした。
焼き菓子はこんなにも軽く、こんなにも香り高いものだったのか。そんな発見があります。
3.主役は小麦と生地

この店のお菓子を食べていて印象に残っていることの1つが最初に感じることが小麦の香りであるということ。
意外性のある食材の組み合わせや強い香りや味などわかりやすい驚きや美味しさが1番に来るのではなく、生地そのものの美味しさが土台にあります。
小麦やバターの香り、口溶け。その基礎がしっかりしているからこそ、そこに添えられるアクセントが生きています。
そして、どのアクセントもいい意味で主張しすぎていません。後述している「レモンと生姜のマドレーヌ」をはじめ時間差で香りが立ち上がり、味わいの輪郭を作っている印象です。
派手さはないですがヴィエノワズリーや焼き菓子の確かな美味しさに出会うことができると思います。
4.王道のフランス菓子をあえて選ぶ

店に並ぶ商品の方向性も印象的でした。
プチガトーが販売されることもありますが、メインはあくまで伝統的な焼き菓子やヴィエノワズリーです。
華やかなホテルデザートやパフェと比べると、一見すると地味に見えるかもしれません。
SNS映えする華やかなスイーツを多く並べれば、もっと人を集めることもできるでしょうし、それは青木シェフの得意分野でもあるはずです。しかし、そうはしていません。
焼き菓子やヴィエノワズリーは小麦粉、バター、卵、砂糖というシンプルな構成のため、より誤魔化しが効きません。配合や発酵、焼成、水分量など基礎的な技術がそのまま味に現れる世界です。
その焼き菓子やヴィエノワズリーで勝負している点が素晴らしいと感じました。
そして、実際に一般的な商品よりも一段も二段も高いクオリティーに自分自身魅せられました。
SNS映えスイーツや新たに誕生したもの、海外から輸入されたスイーツも素晴らしいと思います。一方で、料理人が古典料理に回帰するように、パティシエが伝統菓子や文化を再評価し、技術を見つめ直すことで伝統的なフランス菓子がより発展、美味しくなることも非常に意義深いことだと考えます。
青木シェフはその高い技術力で 「フランス菓子の真の魅力」を示していると感じました。
5.忘れられない「レモンと生姜のマドレーヌ」
今回特に感動したのが「レモンと生姜のマドレーヌ」です。このマドレーヌは、数段構えの構造になっています。

まず最初に来るのはグレーズのザクッとした食感。表面がベトベトしておらずサラッと、カリッとしています。技術力の高さや品質の良さを感じます。
続いて、ふわりとした生地。その生地は驚くほど口溶けが良く、すーっと消えていく。そしてその途中でレモンピールと生姜の香りが静かに現れる。
面白いのは、レモンや生姜を強く主張させていないこと。レモンや生姜のえぐみや酸味、辛味は全くなく、それらの良い部分がふわっと心地良く香る。
あくまで中心にあるのはマドレーヌそのもののおいしさ。そこに優しい風のように香りが重なる。
小さなお菓子の中にきちんとした物語があります。
6. 商品紹介
フラン


甘さ控えめで意外と軽く食べられる。一口目のインパクトは控えめだが、同じ味が続くフランを美味しく食べることを考えた調整力を感じる。アパレイユは濃厚すぎず、卵臭さも全くない。土台の生地のサクサク感も良かった。
りんごキャラメルのパウンドケーキ

しっとりを超えて、ねっとりとした食感。 キャラメルのほろ苦さが良い。
チョコと柚子のフロランタン

こちらもレモンと生姜のマドレーヌ同様フロランタンの美味しさがはじめに来て、最後にほのかに柚子が香る。背徳的な中に上品さがある。
クロワッサン

ザクザク食感というよりは口溶け重視の印象。サクサクした層が軽く、口の中で溶けていく。
パンスイスショコラ

ピスタチオとラズベリーのフィナンシェ

ヴァローナマダガスカル産チョコチップクッキー

カヌレ

どのお菓子も共通しているのは過度に甘くない、香りが強すぎないこと。だからこそ、ずっと食べ続けられるし、食べ続けたくなる。
フランス菓子が好きな人は勿論のこと甘いものがあまり得意でない人にこそ体験していただきたいと感じます。
7.おわりに
皆、大きな袋を持って笑顔で店を後にする。
ドアを開けた瞬間、小麦が焼けた香りの塊が飛び込んでくる。
その空気を吸い込むだけで少し幸せな気分になる。
特別奇抜なことをしているわけではない。
それでも明らかに一線を画すおいしさがある。
きちんとした技術と基礎があるからこそ、小さなアクセントが個性になる。
それが青木シェフの作るお菓子だと思います。
気になる方はぜひ訪問してみて下さい。

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