こんにちは、ラパンです。
この度は黒栁桂子さんの「めざせ!ムショラン三つ星~刑務所栄養士、今日も受刑者とクサくないメシ作ります~」を読みました。
突然ですが、刑務所の食事は誰が作っているか知っていますか?
考えた事がない、又は給食業者が入っているのでは?と思う人が多いのではないかと思います。
正解は、受刑者が食べる食事は受刑者自身が作っているんです。
また、刑務所内にバナナやアルミホイルを持ち込んではいけないことを知っていますか?
この本はそんな調理経験ゼロの男子受刑者達が起こす珍事件や刑務所での給食の実態が紹介されています。
刑務所内の食事について知ると「えっ、そんなことが…」と驚くことばかりだと思いますし、真面目にやっているが故の珍事件はクスッと笑ってしまうこと間違いなしです!
また、それだけでなく、簡単で美味しく健康的な食事を目指し奮闘する管理栄養士の姿や時には受刑者や刑務官の熱意やドラマを描いている点もこの本の面白い所です。
仕事に対しての情熱を失いかけている時や何のために働いているかわからなくなってしまうような時に読むと人のために頑張ってみようと思えたり、元気をもらえる作品だと思います。
非常に面白かったです!!!
それでは感想を書いていきます。
~作品情報~
書名:「めざせ!ムショラン三つ星~刑務所栄養士、今日も受刑者とクサくないメシ作ります~」
著者:黒栁桂子
出版:朝日新聞出版
ページ数:233ページ
目次
- 刑務所での給食の実態、珍事件、管理栄養士の奮闘を描く!
- 私が読んだ動機
- こんな人にオススメ
- 作品説明
- 読書初心者でも読みやすい
- 刑務所内の給食のリアルな実態を知ることができる
- 男子受刑者の真剣がゆえの珍事件がクスッと笑える
- 「より良い食事を!」奮闘する栄養士の情熱、刑務官の優しさにぐっとくる
- まとめ
1.刑務所での給食の実態、珍事件、管理栄養士の奮闘を描く!
私が読んだ動機
- 「ムショラン三つ星」というワードに興味を惹かれたから
- 刑務所での栄養士の仕事内容、食事内容が気になったから
私自身が管理栄養士として働いていることもあり、興味があり手に取りました。
- 刑務所内での出来事や生活についてあまり考えることがなく、自分の知らない世界について知りたいと思ったから
こんな人にオススメ
作品説明
著者の黒栁桂子さんは男子刑務所で働く管理栄養士。
「刑務所の食事は受刑者が作っている」という事実を知らずに刑務所の炊場(炊事工場の略、給食を作る場)に飛び込んだ栄養士と料理初心者の男子受刑者達の給食作り奮闘記。
本書は刑務所内での給食事情を知ることができるだけではありません。
調理経験ゼロの受刑者が起こす珍事件や、より良い食事を提供するために栄養士が試行錯誤したり、刑務官の受刑者の食事に対しての熱い思いなど刑務所内の給食にまつわるドラマが多く記されています。
笑いあり、情熱あり、涙ありの作品になっています。
読書初心者でも読みやすい
私は30歳になりますが、恥ずかしながらほとんど本を読んできませんでした。
今まで本を一冊読み切ったのは2,3冊です。
学校の読書感想文も適当に一部だけ読んで書いたり、読もうと思って買った本も途中で難しいと感じたり飽きてしまい読むのをやめてしまうことがほとんどでした。
30歳になり、やっとその現状に危機感を感じるとともに、自分の知らないことを知りたいという好奇心からこうして読書をして、その感想を記事にまとめているのです。
そんな私でも、こちらの一冊は非常に読みやすく2日程度で読めてしまいました!
表紙は柔らかい感じのイラストや文字ですが、内容は刑務所がかかわっているし、書いている人も国家公務員の管理栄養士(法務省の専門職である「法務技官」)ということで内容もお堅い感じなのではと思っていましたが、実際は全くそんなことはありませんでした。
「刑務所内でのいわゆる事件をそんなにコミカルに書いていいの?」というくらいの表現で給食作りでの珍事件が描かれていたり、受刑者や刑務官との会話や心の声にユーモアや時にトゲがあったり……。
非常にとっつきやすい文章で読みやすかったです。
なかなか読書に踏み切れない方、本を読むのが苦手な方でこの本に興味を持って頂けたのなら、この一冊は本当にオススメです。
刑務所内の給食のリアルな実態を知ることができる
冒頭でも書いたとおり、刑務所で受刑者が食べる食事を受刑者達本人が作っているという事実に私は驚きました。
給食業者が入っていて、彼らが食事を作っていると思っていたからです。
病院でいえば患者様、食事管理を必要とするスポーツチームであれば選手が食事を作ると考えるとこれが一般的ではないことは、より感じて頂けると思います。
私自身も病院で患者様へ毎食病院食を作り提供しているため、大変さもわかるつもりです。
給食業務には調理技術とともにコミュニケーションや協力も必要不可欠です。
そんな中、男子受刑者は料理初心者。一般的には考えられないようなことが沢山起こる現場でそれをまとめ、指導し対応するのは大変だろうなと思いました。(聞くだけであれば面白いのですが笑)
他にも本書からいくつか「へぇ~、そうなの?」と感じた内容を紹介します。
1つは受刑者の食事が通称「赤六法」(正式名「矯正実務六法」という法令集で事細かに定められていること。
例えば、刑務所で給与する食事の主食は麦飯であること、さらにそれは米7に対し、麦3であること、各施設で精米している搗精率も玄米1を0.93~0.94の範囲でと決められているなど……。
ある程度法律で決められていることは想像できましたが、玄米の精米後の量まで細かく決められているという点に驚きました。
2つ目は刑務所で使ってはいけない食材や商品が多数あること。
一番驚いたのはバナナ。理由はバナナからタバコが作れるから!
さらに、アルミホイル(タバコを作った際に必要な火はコンセントの火花とアルミ箔から発生させることができるから)、みりん(盗み飲みされる恐れがあるため)など他にも刑務所内に持ち込みできないものが多数紹介されています。
受刑者目線の本や映像は多くありますが、職員の目線で書かれていることもこちらの本の大きな特徴かと思います。
刑務所独特のルールなど多数描かれており、非常に勉強になりました。
男子受刑者の真剣がゆえの珍事件がクスッと笑える
前述したとおり、刑務所の受刑者の多くが調理経験ゼロのため、多少調理に携わっている者からすると「えっ、そんなことが……」と思う珍事件が起こり、それらが多数記されています。
例えば、ジャガイモの皮むき作業ではくぼみの部分をひたすらピーラーで剥く、さつまいもの皮むきでは皮を剥いた後変色した部分を永遠に剥き続けてしまうなどなど。
ただ、これらはふざけている訳ではなく真剣故の失敗のため、クスッと笑えます。
また、そういった問題に対し受刑者がより簡単に美味しく作ることができる工夫を考え、改善する点は同じ管理栄養士として見習いたいと思いました。
「より良い食事を!」奮闘する栄養士の情熱、刑務官の優しさにぐっとくる
受刑者達が起こす珍事件や栄養士とのふれあい?も本書の面白いポイントの1つですが、私は「より良い食事を出したい!」と奮闘する栄養士の情熱や怖いイメージのある刑務官の優しさを感じることができる点もこの本の醍醐味ではないかと思っています。
私が好きなエピソードを1つ紹介します。それは「日替わりドーナツ」の話です。
重労働である炊事勤務に携わる受刑者の楽しみが「延長作業食」(労働時間が10時間以上になる場合に給与されるいわゆる残業のおやつ)。
ある日、普段は威勢のよい刑務官から「栄養士さん、相談があるんです。俺、もっといい延長作業食を食わせてやりたいんですよ。みんな結構がんばってるんで、協力してもらえませんか」と著者は相談を受ける。
しかし、予算は1人40円。使っていたホットケーキミックスを自家製ブレンドにする、飽きないようにトッピングを変える、あんこが放っておいてもできるように炊飯器を活用するなど少ない予算の中で美味しく簡単に作れるよう試行錯誤をした。
その結果、40円でミスド2個分の大きさのドーナツを作ることに成功し、受刑者全員に出すこともできた。(獄旨ドーナツとしてレシピが紹介されています)
食事は生きていく上で必要不可欠なものである反面、「食べられれば良い」と考えることもできます。私自身、刑務所の食事に対して、まずい、物足りなそうというイメージを持っており、正直それはある程度仕方の無いことと考えてしまっている部分もありました。
しかし、予算や作業性の観点など考慮しながらより良い食事を提供しようと工夫し、受刑者が喜ぶシーンを見ると食が栄養を摂るだけの作業になってはいけないこと、「楽しみ」としての食事の重要性を改めて感じました。
他にも、例年冷めてのびきった年越し蕎麦だったのをカップ麺に変えたいと様々なアイデアで実現まで至るも当日著者が忌引きで休み、刑務官と受刑者が一致団結してカップ麺を提供する話も大好きです。
食事を「エサ」としないための努力と情熱、栄養士だけでなく刑務官や受刑者の優しさや頑張りに胸がほっこりすること、自分もがんばろうと思えること間違いなしです。
まとめ
私自身、管理栄養士として日々患者様に食事をお出ししていますが、長年勤めていると給食作りが作業になってしまったり、栄養成分など数字ばかりに目がいってしまうことがあります。
今回、「めざせ!ムショラン三つ星~刑務所栄養士、今日も受刑者とクサくないメシ作ります~」で著者の工夫や情熱に触れ、自分自身も患者様がより美味しく安全に食べられるように、日々より良い物が出せるように考えて向き合っていきたいと感じました。
私は著者と同じ栄養士のため、よりこのように思えたかもしれませんが他の職業の方でも仕事や日常生活への向き合い方のヒントになるのではないでしょうか。
情熱あり、笑いあり、涙あり。獄中での給食作りを書いたこの本は最高のエンターテインメントです。
是非、読んでみてくださいね。
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