最高の仕立てと調理で描く魚の真価 / 「茶懐石温石」

2025年12月、「茶懐石 温石」さんに伺いました。前田魚店の前田尚毅さんの仕立てた魚と杉山乃互さんの技術が合わさった料理が素晴らしかったです。

1.普段いただく魚とは全くの別物!素材と向き合い続け魚のポテンシャルを引き立てる

まず紹介したいのは、魚介類の素晴らしさ。

魚介類は焼津のもの、前田魚店の前田尚毅さんが仕立てたものが中心。

食べ始めは正直に言えば物足りなさに近い感覚がありました。しかし、食べ進めるほどに魚臭さを感じさせない透明感、キレのある脂や澄んだ味わい、もっちり、あるいはほわりとほどけるような保水性のある身質の虜になっていました。整えられた魚の美味しさを感じます。

特に印象深かったのが「やいと鰹」。腹部にお灸を据えたような丸い黒い点が3箇所あるマグロと鰹の良いとこどりをしたような魚です。

きらきらした光沢感のある見た目が美しく、身質はもっちり。口直しの玉ねぎを使う必要が一切ないほど青魚特有の嫌な匂いがなく、鰹特有の味わいや香りが最後にほのかに香ります。さっぱりしていながらも旨味がしっかりありました。

「鰹の美味しさ=強い香り、独特な味わい」だと思っていた自分の前提が静かに崩れた瞬間でした。

火を入れた魚のふっくら感も素晴らしかったです。前田さんの調理法や食材に合わせた水分量を見極めた仕立てとその水分量を考慮した杉山さんの火入れ。素材と向き合い続けているからこそ生み出すことができる料理なのだろうという印象を受けました。

2.素材の良さを活かしながらオリジナリティとひと工夫が光る

素晴らしい魚介類に手を加えてより美味しさを引き出そうとしている点も印象的でした。

伊勢海老は殻付きで炭火焼き。生の身の甘みと加熱した香ばしさや甘味、食感を両立させた仕立て。伊勢海老単体も良かったのですが、特筆したいのは自家製の豆板醤と伊勢海老の味噌で作ったソース。

自家製豆板醤は辛味はかなり抑えられており、伊勢海老の甘味を引き立てる程度に調整されています。自家製の豆板醤の香り、旨味と伊勢海老の味噌で作ったソースの旨味が重なることで伊勢海老の味により奥行きが生まれていました。

焼津の蛤はお粥仕立てで。深い旨味のある蛤が米と合わさることで旨味が相乗されています。それと共に伸びのある旨味がお米やもち麦と咀嚼することにより持続し口内での余韻が長くなっていました。

旨味の“密度”と“持続性”を意識させる一皿でした。

3.料理の背景にある熱い想い

食材に込められた熱い想いにも胸が震えました。

「やいと鰹」は市場は既に閉まっていますが前田さんが困っているならと漁師さんが海に出て獲ってきてくださったもの。結果として年の瀬にして今年一番良いものが入ったとのことでした。

良い魚を獲る漁師さん。より良い状態に仕立てる前田さん。その魚をさらに引き上げる杉山さん。喜んでほしいという熱い想いがお話と料理から伝わってきました。

「誰かのために」という想いの連鎖が食材や料理の質を押し上げている、そんな良い循環を感じました。

また、焼津の水産高校で育てられた鱒の締め方を前田さん自ら学生に教えているという話も印象に残っています。技術を次世代に継承していく、食を通して静岡を盛り上げていく、それを一過性のものにしない。そういった想いが料理に宿っており、最高の調味料になっていました。

静岡という土地で、漁師、魚屋、料理人がつくる良い循環。これからも応援していきたいです。

4.メニュー紹介

山芋薯蕷(じょうよ)蒸し

山芋の皮、カラスミ、わさび

鞠子宿(まりこじゅく)で有名な山芋とメレンゲで作った薯蕷蒸し

かりかりに炙った山芋の皮の食感と香りが楽しい。カラスミの塩味の塩梅が絶妙。

焼津蛤のお粥

わさび漬け もち麦

焼津のカマス、たたいた葱、白菜

保水されていることがわかるホワホワの身質。たたいた葱の香りがいいアクセント。

白甘鯛

焼き茄子、椎茸

白甘鯛のしっとりした身質が魅力的。しみじみと美味しいお椀。白甘鯛の優しい美味しさを活かす淡い汁が印象的。

やいと鰹

焼津のサワラ

皮目をさっと炙って塩とわさびで。

脂がしっかりのっているが、くどさは全くない。キレのある脂。

ホウボウの蓮根包み焼き

静岡在来種のあさはた蓮根

外はかりっと中はしっとり。噛み締めるほど旨みが溢れ出す滋味深い味わいが素晴らしかった。

焼津の伊勢海老

自家製豆板醤、伊勢海老の味噌で作ったソース、みぶな

朝穫れブロッコリーの炭火焼き

ニンニクのような香り。

金目鯛の鱗焼き

塩と実山椒醤油で。皮目はサクサク、身はしっとりジューシー。食感の対比が良い。

小松菜と菜の花の胡麻辛子和え

お口直し

炊き立ての新米

ヒゲダラ、海老芋、ほうれん草

ご飯/味噌汁/焼津の水産高校で育てられた鱒/甘長唐辛子/野菜と魚のコロッケ/香の物

鱒は前田さん自ら学生に締め方を教えているそう。鱒特有の匂いなどなく、脂のバランスも良かった。

鰤の漬けご飯

脂が綺麗。さっぱりとしていて美味しい。

あきひめときらぴか

あきひめからいただく。

食べ比べができて楽しい。

焼き芋のきんつば

自家製甘納豆と焦がし胡桃

焼き芋を使っており甘味が強いが焦がし胡桃や胡麻の香ばしさがあり甘さだけでないのが素晴らしかった。

抹茶

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