Cook The Forest~森を食べる~「Grič」ルーカ・コシールシェフの世界

長野県南木曽町にあるZenagi主催のガストロノミーイベント「森を食べる #03」に参加させていただきました。

口で、鼻で、目で。森に没入する食体験でした。

目次

  1. シェフ紹介
  2. メニュー紹介
  3. 全体を通して

1.シェフ紹介

シェフを務めたのは、スロベニアのレストラン「Grič」オーナーシェフ、Luka Košir(ルーカ・コシール)さん。

ミシュラン一つ星、さらにサステナビリティへの取り組みが評価されグリーンスターも獲得しています。

↑ルーカ・コシール(写真中央)と若き料理人の皆さん

2.メニュー紹介

森のドーナッツ

スロベニアの郷土料理Nangosh(円形に伸ばした生地を揚げたパン料理)をアレンジ。

本来はサワークリームを入れることが多いそうですが、今回は放牧山羊のチーズと木蓮の枝から抽出したクリームを中に。上からハードチーズを削りかけています。

もっちりとした生地に、爽やかな酸味のクリーム。

🍸10時間かけて水出しした緑茶のスパークリング

森の”サーモン“

沢水を直接かけ流しで生け簀に供給するなどこだわりを持って育てられている「いぶき養鱒場」さんのニジマス。その味わいに感動したルーカシェフが、刺身をイメージし“引き算”で仕立てた一皿。

今回のものは4、5年もので塩締めしたもの。海苔を合わせることも考えたそうですが、今回は森の食材でいきたいとのことで鞍掛豆を海藻の代わりに。わさびの要素でわさび菜。他、鱒のいくら、モミの木のオイルを合わせています。

透明感のある澄んだ味わい。刺身という構造を分解して、土地の食材で再編集する発想が印象的でした。

🍸黒文字の枝から抽出したエキスと柿の皮茶

森のフォアグラ?

エシカルなものを使うことを心情にしているルーカシェフ。フォアグラの味は好きだが、倫理的でない点に葛藤があったそうです。

そこでどうにかフォアグラを使わず味だけ再現することができないか考えて発見したのがエリンギ。大量のエリンギを2時間以上炒めて、キャラメリゼ。味噌玉製法で作られた味噌のチップ、生のキクラゲ、エシャロットのピクルスが添えられています。

説明無しで食べるとエリンギだとわからないくらいフォアグラのよう。

ナッティで甘く香ばしいロースト香。チーズのような風味のする味噌のチップも相性抜群。

プラントベースの料理では良くある組み合わせや技法なのかもしれません。しかし、ワイルドな製法で作られた味噌を合わせることでより旨みと香りが増強されていたり、フレッシュな付け合わせがあることで最後まで単調にさせないなど工夫があり一皿全体の満足感が非常に高かったです。

🍸58%まで磨いた米で作った甘酒に柚子をソルティードッグのように添えて

ドリンクと合わせるとより旨味が増幅。一般的な甘酒と比べるとクリアな印象。

森の猪

猪のラグー、蓮根、すんき、檜の葉のチップス

Žlikrofi(ジュリクロフィ:スロベニアの郷土料理で小さなラビオリ状の詰め物パスタ。現地では豚の背脂、じゃがいもをいれるのが一般的)をアレンジしたもの。

猪はハンター歴60年のジビエハンターの方が仕留め3回血抜きしたもの。完全無農薬の蓮根を刻みとチップスに。

派手ではないけれど滋味深く素朴で美味しい。すんきは塩を使わず、乳酸菌で発酵させた発酵漬物。酸味のアクセントというよりは旨みの掛け合わせとして使われている印象で、酸味が強すぎない。そのため全体を丸くまとめていました。

🍸地元のほうじ茶に梅のシロップ

ロゼっぽく。猪の脂を切るイメージで。

森の麹

米麹、麦麹、古代米、黒米、岩魚、どぶろく、未成熟いちごのピクルス、森の木からとったエキスの泡

麦麹の香りと食感に感動したシェフが米麹、古代米、黒米と共にリゾットに。薪で5時間焼いた岩魚の骨からとった出汁とどぶろくで炊いています。

古代米の野生的なニュアンスと麦麹の独特の香りが好印象。香ばしさが心地よい。

↑米麹(写真右)と麦麹(写真左)

🍸木曽檜から蒸留した檜ウォーターに柑橘と葡萄を漬けた物

森の卵と野菜

卵、ナズナや菜花などの野菜、蕗の薹

Gričのシグネチャー的一皿。卵にサラダを合わせるのが好きで合わせているそう。

ぬるま湯で黄身だけを加熱。下にはムース状にした菊芋、蕗の薹のオイル、蕗味噌。蕗の薹の花を散らして。

蕗の薹はスロベニアでは薬用で、食べる文化はないそう。

可愛らしい春っぽい見た目。苦味や辛味の強い野菜と半熟卵のねっとり感。

高級食材ではなくても、細かな手仕事で印象的な一皿に仕立てているのが素晴らしかったです。

🍸地元のオーガニック玄米茶にワイン葡萄で作ったお酢

森の野草

野草のグラニテ。

無農薬で栽培されたスイバのグラニテ、下にイタドリの塩漬けとジャム。

キウイやシャインマスカットを思わせる爽やかな酸味が心地よいです。

イタドリは地元の方から除け者扱いされることが多いらしく、普段食べることも少ないそう。そういった先入観にとらわれず、感動したものを素直に料理に昇華している点が素敵。

地元の人達も食べないような食材をきちんと美味しくして付加価値をつけている点が素晴らしいと感じました。日本人、地元の方も知らない食材の魅力に気づかせてくださり非常に意義深い食体験でした。

🍸2年熟成させたすんきの汁、シャインマスカット

森の鹿

鹿、魚醤とカヤの実を煮詰めたソース、香茸の出汁、松の木を炭にして蒸留したオイル、セリ、セリの葉の部分とカヤの実のピューレ

アンモニア臭がしないように粘膜の一つ一つに至るまで丁寧に処理された鹿は非常に綺麗な味わいでシルキー。

魚醤の香りを強く感じ、鹿の繊細さを消してしまわないか心配だったが食べてみると強過ぎることなく旨味の相乗効果でより味わいが重層的になっていました。鹿の香ばしい感じと魚醤の香りも合っていて全体のバランス感、一皿の完成度が素晴らしかったです。

南木曽の森の豊かさを感じさせてくれた一皿。

🍸ワイン用の赤ぶどう。タンニンを出したいので紅茶、赤ワイン感を出したいのでスモモを加えて。

森の山羊

秋、冬に採って熟成させたキウイ、蜂蜜、シェーブルチーズのムース。森の要素を加えたいとのことでホテルの裏にある松の実。

🍸ワイン用の白ぶどう、梨、蜂蜜

森の柿

干し柿、フレッシュな柿をジン、すだちの果汁でマリネしたもの。チョコレートケーキ、梅干しのパウダーをかけて。

梅干しの香りが良い。柿、チョコレートという濃厚で単調になりがちかなところに梅干しのパウダーが加わることで香りや酸味のアクセントに。

🍸アカマツの根っこを生かした森のシロップ、杏、木地師(きじし/木を加工して器などの素地を作る人が削った最高級の檜

3.全体を通して

発酵食品の使い方が特に印象的でした。

麦麹や魚醤など個性の強い素材(参加された方は麦麹の香りに衝撃を受けたはず)を、全体の調和を崩さず共鳴させるバランス感覚。

一口、一皿の中に多層的な香りと味がありながら、きちんと一つにまとまっている。

その緻密さと感性に強く心を動かされました。

至る所に森の要素が散りばめられ、まるで森の中を歩いているような感覚に。静かな癒しを感じる食体験でした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました