こんにちは、ラパンです。
この度は外山薫さんの「君の背中に見た夢は」という小説を読みました。
皆さんは小学校受験にどんな印象を持ってらっしゃいますか。本作は30代会社員で2人の子供を育てる母、新田茜が様々な問題に直面し翻弄されながらも娘の小学校受験合格に向け奮闘する物語です。私は小学校受験に対し、最初はそんな小さくて何も分からない中、大人のふるいにかけられるなんてかわいそう、子供が我慢しなければいけないことも多く、親のエゴなのではないかとそんな風に考えていました。実際に小学校受験というものに対してのイメージはそこまで大きく変わりませんでしたが、その大変さについては伝わってきたのと、悪いことばかりでないこと(子供の興味ある分野の経験を通して知識が豊かになったり、丁寧な暮らしにつながったり)が分かり興味深かったです。
キャリアのため、見栄のためなど小学校受験に対する親の考えは様々で、茜の思いにも少し歪みを感じる点がありました。しかし、それと同じくらいに根幹にある母親として子を思う気持ちを強く感じ、同じ親として非常に胸が熱くなりました。子供にどう生きていって欲しいかを考えるきっかけにもなりました。そして、育児に家事、仕事と頑張る茜の姿から苦悩とともに強いエネルギーを感じ、自分も頑張ろうと力をもらいました。
きっと、子育てをしている親御さんは分かって下さると思うのですが、どんなに大好きでも疲労や精神状況によって子供を愛したくても愛せないときもありますよね。そんな心情もまっすぐに書いて下さっているので、強く共感しましたし、そのリアリティにより非常に引き込まれました。
本作はそんな魅力がつまった作品になっています。特に日々頑張るお母さん、お父さんに読んで欲しいと思いました。
それでは本書の魅力について解説していきます。
~作品情報~
題名:「君の背中に見た夢は」
著者:外山薫
出版:KADOKAWA
ページ数:293ページ
目次
- 仕事と家庭の両立、非協力的な夫、高額な教育費に悩みながらも過酷な小学校受験に挑む母親、茜の物語。30代会社員2児の母の生々しい感情と娘への思いを丁寧に描いた作品。
- 私が読んだ動機
- こんな人にオススメ
- 作品説明
- 茜の生まれ、現状に対するコンプレックスや夫婦間のやりとり、親の苦悩など心理描写や会話がリアルに丁寧に描かれており引き込まれる
- 想像の斜め上をいく世界!本当に?と疑いたくなるような幼児教室や小学校受験の裏側が垣間見える
- 後半の志望校の親子面接で茜が娘について語るシーンは必見!受験は、家庭は、仕事はどうなる?
- まとめ
1.仕事と家庭の両立、非協力的な夫、高額な教育費に悩みながらも過酷な小学校受験に挑む母親、茜の物語。30代会社員2児の母のリアルな感情と娘への思いを丁寧に描いた作品。
私が読んだ動機
- プロローグでは受験当日の様子、受験までに色々とあったであろうことが描かれている。それが非常に魅力的な導入で何があったのか気になったから
- 自分自身、子を持つ親として小学校受験という未知の領域について知りたいと思う部分があったから
こんな人にオススメ
作品説明
大手化粧品メーカーで働く主人公、新田茜はある日従姉妹ののさやかの影響で、中学受験回避のための小学校受験に興味を持つように。テレビ局記者の夫、総介と5歳の娘結衣と弟の進次郎の4人家族で茜と総介は世間的にはパワーカップルと呼ばれるが、小学校受験の世界はさらに上の富裕層との戦いだった。
仕事と家庭の両立、協力してくれない夫、かさんでいく教育費、思い通りにならない子供たち。悩み葛藤しながらも、娘の結衣を名門小学校に合格させるため、茜はどんどん小学校受験にのめり込んでいく。
その先に見えるものとは――。
茜の生まれ、現状に対するコンプレックスや夫婦間のやりとり、親の苦悩など心理描写や会話がリアルに丁寧に描かれており引き込まれる
本作の魅力の1つが主人公の茜の心情を丁寧に描いている点だと思います。
例えば、茜夫婦の年収は2人合わせて2000万円を超える恵まれた環境にありますが、小学校受験で戦う家庭の多くは経営者や弁護士などの富裕層で別荘や高級車など別次元なんです。そんな富裕層と自身の生まれや現状を比較して悲観したり、自身の暮らしぶりに満足していなかったり、隣の芝生は青いというものでしょうか。本作はそういった人間の奥底の嫉妬や怒りなどの心情が上手く表現されていると思いました。
受験対策のために紹介してもらった幼児教室で仲良くなった麗住の家で麗住の娘の穗乃果ちゃんについて茜が相談を受けるシーンを紹介します。
「穂乃果ったら、昔から引っ込み思案で。私に似ちゃったんですかね」
ポットとカップにお湯を注ぎながら、麗住が憂鬱そうに話す。おっとりした口調とは裏腹に、その両手の動きはなめらかだ。〔中略〕家で飲む紅茶のために湯通しをする人なんて、はじめて見た。普段、紅茶を飲むときはティーバッグで、時短のために氷を入れて冷ましている私とは大違いだ。
〔中略〕ビンテージマンションと呼ばれているであろう建物の二階に位置する麗住の家は広々としており、リビングだけで二十畳はありそうだ。部屋の端で光を浴びるドラセナの木を見ながら、女性誌でおなじみの「丁寧な暮らし」という文字が脳裏をよぎる。洗濯物がリビングの片隅で山を作り、玩具と本が散らばる我が家の雑な暮らしとは雲泥の差だ。
「お昼、ピザでも取りましょうか」
ドミノピザかピザーラでも頼むのかと思っていたが、麗住が何やら電話をすると、イタリアンレストランから本格的なマルゲリータピザが届いた。濃縮還元ではない、生搾りのジュースに「こんなおいしいの、はじめて」と興奮する結衣。麗住の洗練された一挙手一投足に、何気ない部分に現れる生活の質の差に、引け目を感じてしまう。
もっとも、隣の芝生が青く見えるという点では、麗住も同じらしい。
〔中略〕「結衣ちゃんって、おうちで何か特別なことしてますか?」
これが本題だとばかりに、麗住が茜をじっと見つめる。
「うーん、全然。うちは一歳から保育園に入れてるし、進次郎もいるから、大したことは何もできてなくて」
嘘はついていない。この五年間を振り返っても、会社員と母親の二足のわらじを上手に履きこなしているとはとても言えない。
〔中略〕一方で、口には絶対に出せないことがある。正直、結衣の成長に関してはこれまで心配したことがほとんどない。寝返りも、ハイハイも、喋るのも、結衣はなんでも早かった。
〔中略〕優越感。大道寺先生(※幼児教室の先生)の教室に通わせるようになってから、その後ろ暗い感情は、密かに、しかし確実に心の奥底で育まれている。名門幼稚園に通わせていようが、専業主婦で丁寧に面倒を見ていようが、結局、フルタイムで働きながら片手間で育てている私の娘のほうが全然出来が良いじゃないか――。
目の前の麗住に恨みがあるわけではない。それでも、結衣を産んでから幾度となく「保育園なんだ、大変だね」「もっとママと一緒にいたいよね」という無神経な言葉を聞かされるたび、仕事も育児も中途半端だと言われているようでモヤモヤした何かを感じていたのは事実だ。麗住が子育てに悩んでいるという話を聞くと、歪んだ自尊心が高まるのを感じる。それが好ましいものではないということをわかっていながらも。
〔中略〕「私もまだわからないことだらけだけど、まだ時間はあるし、そんなに気にしなくてもいいんじゃないですかね」
気休めにもならないとわかっていながらも、他にかける言葉を知らない。それでも、麗住は一人で抱えていたものを吐き出してスッキリしたのか、また元の落ち着いた上品な佇まいに戻った。
「ありがとうございます。こういう話、できるひとがいなくて。これからも仲良くしてくださいね」
目を見て話す麗住を前に、ささやかな優越感に浸っていた自分の浅ましさを思い知る。〔中略〕本人の知らないところで優劣をつけられ、親の虚栄心を満たしたり、劣等感を刺激したり。親の心子知らずというが、私たちの醜い感情には気づかないまま、無垢なままでいてほしい。自分勝手だとは思いつつも、そんなことを思う。すっかり冷めた手元のアールグレイを、静かに飲み干す。
外山薫「君の背中に見た夢は」KADOKAWA、60、61、63,64,65,66頁
どんな人にも悩みやコンプレックスはあり、それは尽きないんだなぁと痛感するとともに、最後の「すっかり冷めた手元のアールグレイを、静かに飲み干す。」という一文の表現が個人的に好きでセンスを感じました。
また、夫婦間でのやりとりや駆け引き?、茜の行動と裏腹な皮肉や毒っ気のある心情などもリアルで非常に世界に引き込まれました。キー局の記者である夫の総介が家事もせずに自宅でパソコンに向き合っているシーンも紹介させていただきます。
洗濯物を畳み終え、家族四人分の衣類を持ってリビングとクローゼットを往復する。相変わらず、総介はパソコンと向き合っている。時計の針は十一時半を指していた。
いつも好きなだけ仕事ができて、相変わらず良いご身分ですね、と心の中で悪態をつきながら冷蔵庫を開ける。ドアポケットに収まる麦茶ポットはほぼ空っぽだった。夕食を食べ終えた時点ではまだ残っていたはずだ。夫婦のどちらかが飲みきった時点で新しい麦茶を作るというのが結婚以来の暗黙の了解だが、総介は時折、こういったセコい真似をする。
「麦茶ちょっとしか残ってないじゃん」
洗濯物の分も込めて、苛立ちをストレートにぶつける。しかし当の総介は聞いているのか聞いてないのか、「んあ」と生返事だ。
「そんなに一生懸命、何を書いてるの?」
嫌みをたっぷり込めて、総介の隣に座って話しかける。
〔中略〕「実は楫取さんから、総裁選のスピーチを頼まれてる。付き合いも長いし、俺が一番楫取さんの想いや政策理念がわかっているからって」
〔中略〕「楫取さんが首相になったら、この国も変わると思うんだよね。あの人、デジタルに強いし、官僚からの評判もいいし。国定さんも平時の首相としては悪くないと思うけど、今みたいな時代には利益調整型のリーダーは合ってないよな」
饒舌に語る総介の話を聞いているうちに、イライラしてきた。日本の未来を憂う前に、やるべき事があるんじゃないか。総裁選のスピーチを書いている暇があったら、そのご自慢の文章力で、小学校の願書に何を書くかを一緒に考えるべきなんじゃないか。誰が総理大臣になっても我々の生活に影響はないが、受験には結衣の一生が懸かっているのだ。この男に、父親としての自覚はいつになったら芽生えてくるのだろうか。
「いやちょっとさ……」
と口を開きかけたが、目を爛々と輝かせる総介を見て、一瞬で悟った。この場で何を言っても無駄だ。ここで否定したら多分、いや、絶対に拗ねて後々面倒くさいことになる。先日読んだ本にも、受験中の夫婦喧嘩が子供の精神に与える悪影響について書いてあった。本当だかどうか知らないが、受験で夫婦仲がこじれ、離婚したなんていうケースもあるそうだ。仕方ない、ここは私が大人になろう。
「へー、すごいじゃん」
せめてもの抵抗で、感情を込めずに話す。仕事だと思えばなんでもない。こちらの気も知らず、総介の表情がパッと明るくなる。少し褒められただけで嬉しそうな顔をして、まるで無邪気な子供みたいだ。
〔中略〕記者の妻の大先輩である千鶴(※茜の義母)からあらかじめ聞いておいた、夫の操縦法を繰り出すタイミングはここだ。
「仕事に夢中になるのはいいけどさ、落ち着いたら結衣のことも手伝ってよ?願書書くのとか、政治家のスピーチライター頼まれるレベルの文章力なら余裕でしょ?」
「あー、願書ねー。まあ文章なら何とかなるかな」
我ながらうまいこと受験の話に誘導できた。総介は褒められたことで自尊心が満たされて満足したのか、まんざらでもなさそうだ。あまりにも簡単すぎて、ちょっと面白くなってきた。きっと、老獪な政治家にもこうやって利用されているんだろうな。
こちらの掌の上で踊らされているとも知らず、嬉しそうにビールを飲む総介。面倒くさいが、すべては結衣のためであり、つまりは家族のためでもある。小学校受験という未知の海での航海で進路を定め、船員に指示を出すのは私しかいない。
外山薫「君の背中に見た夢は」KADOKAWA、170、172、174,175、176頁
麦茶がないシーンも総介の家事のしなさ加減の表現として秀逸だなと思いましたし、妻が夫を下に見ている感じもダークな笑いというか面白いなあと感じました。(これが妻のリアルなのでしょうが……笑〕
皮肉と言えば茜の住む家に対する茜の感想も皮肉に満ちあふれていて作者の外山薫さんは面白い表現をするなと感心させられるばかりでした。
最後に茜が小学校受験に追われて切羽詰まっているからなのか、そうだとしても親の心情とは到底思えないぞっとするシーンも引用して紹介したいと思います。
「すいません、目を離した隙に遊具から飛び降りる遊びをしていて、そこで足をひねっちゃったみたいで……」
若い先生が何度も申し訳なさそうに頭を下げて詫びるが、何も耳に入ってこなかった。結衣の右足くるぶしのあたりに巻かれた、真っ白な包帯が痛々しい。
「まあ骨折はしてなかったんで、数日間安静にすれば大丈夫だと思いますよ」
保育園に常勤する看護師さんの能天気そうな声が気に障る。確かに普段であれば、大した怪我ではないだろう。でも、結衣は明日、入試を控えているのだ。カリタスでは過去に運動テストがあった年もある。
〔中略〕「私たちの監視が行き届かなかったのは、本当に申し訳なく思っています。でも、結衣ちゃんは今回の経験を糧にして、次に繋げてくれると思いますよ。子供の成長ってすごいから」
園長先生の言葉が胸にしみる。でも、一期一会の受験に「次」なんてものはない。私がいま欲しいのは、経験なんかじゃない、合格だ。
「じゃあちょっと早いですけど、進次郎くんも連れて来ちゃいますね」
若い先生がパタパタと足音を鳴らしながら、二歳児クラスへと向かう。お友達と遊んでいる途中で帰ることになって不満なのか、廊下をゴロゴロ転がって拒否する進次郎。普段通りのイヤイヤぶりに、少し頭にきた。
――怪我したのが、進次郎だったら良かったのに。
頭の中に一瞬浮かんだ、不穏な思考の断片。首を振って慌てて打ち消そうとするが、一度でも思ってしまったことを、なかったことにはできない。こちらの存在に気づいて、「ママー!」と駆け寄ってくる進次郎の顔を正視できなかった。
外山薫「君の背中に見た夢は」KADOKAWA、247、248頁
恐ろしすぎませんか?
こういった感情はなかなか共感しづらい部分ではありますよね。ただ、こんな風に一瞬でも思ってしまうほど、小学校受験に関わる親は精神的に追い詰められてしまうのでしょう。
他にも職場で自分よりも仕事ができないくせに茜が辞退したことで繰り上がりで女性管理職候補の研修に参加することになった独身女性に対する心の中での悪態や思い通りにいかない子供とのワンオペ旅行での苦悩、同級生との飲み会のシーンなど受験、育児と仕事、家庭と様々な事柄に追われる2児の母である30代女性の心情や会話が非常に生々しくリアリティをもって描かれています。
著者の外山薫さんは人間の心の中のどろっとした部分を描くのが非常に上手いな感じました。是非、外山さんワールドを体験してみて下さい。
想像の斜め上をいく世界!本当に?と疑いたくなるような幼児教室や小学校受験の裏側が垣間見える
私は大学生の時、小、中、高校生を対象とした塾の講師をアルバイトでしました。そのため中学受験については知っていましたが、小学校受験、さらに幼稚園受験なるものがあることを知りませんでした。さらに、本作で描かれる小学校受験や受験のために通う幼児教室の雰囲気や裏側は非常に独特で想像の斜め上をいくものでした。本の最後に参考文献として多くの受験に関する書籍が載っているので、あまり情報がないと言われるリアルな小学校受験の裏側の一部を覗くことができるかもしれません。非常に興味深かったです。
その中でも特に驚いた内容の1つが食べ物について。プールのレッスン後、仲良くなった子供達や同じ小学校受験に挑むママ友達とのワンシーンです。
「みんなでおひるごはんたべたい!マックいこ!」
素晴らしいアイデアを思いついたとばかりに、結衣が得意満面な表情で叫ぶ。新田家ではプールの後は外食となっており、最近はマクドナルドが定番だ。
一方、他の子はみんな、キョトンとした表情だ。
「マック、しらないの?おいしいし、おもちゃもくれるんだよ!」
結衣は胸を張るが、反応は芳しくない。
「茜さん、あのね、大道寺先生(※結衣が通う幼児教室の先生)があまりファストフードはよくないって。ほら、食育とかあるし……」
おずおずと麗住が事情を説明する。なんだ、その謎ルールは。子供たちはみんなマックのハッピーセットを食べて育つものなんじゃないのか。
外山薫「君の背中に見た夢は」KADOKAWA、47、48頁
他にも私立小学校、特にミッション校や伝統校は公共放送の教育番組は認めているが、戦闘シーンがあるアニメは御法度であること、多くの学校ではキャラクターものの文房具を禁止していること、私立小学校を受験する園児が多い名門幼稚園では子供をアニメに触れさせないという親同士の暗黙の了解があることなど、嘘でしょ?と思うような斜め上をいく謎なルールが満載です。
小学校受験を始めたことによる変化や学校の合同説明会での立ち回り、中学受験、高校受験と異なり学校によって重視される項目や実施される内容が違うことなど知らないことばかりでそれらは新鮮でした。
自分の知らない世界を覗くことが出来るのは本の醍醐味だと思います。知らない世界の扉を開いてみてはいかがでしょうか。
後半の志望校の親子面接で茜が娘について語るシーンは必見!受験は、家庭は、仕事はどうなる?
小学校受験に翻弄される中で、仕事、家庭と様々な問題に直面しながらも前に進もうとする茜。そしてついに、受験本番。第一志望の学校での親子面接で面接官から「娘にどう育ってほしいか」尋ねられた茜の返答は本作の一番の見所であり、親心が伝わりぐっとくるポイントだと思います。
受験までの苦労を知り、本番当日の茜の語りを読んでみて下さい。きっと親という立場であってもそうでなくても子を思う気持ちに心震えると思います。
そして、最後の終わり方も少し想像はしていましたが、非常に良くて読後感も最高でした。
是非、本作を読んでみて下さい。
2.まとめ
子供の人生が豊かになって欲しい、苦労しない人生を歩んで欲しいと思う親心は誰にでもあると思います。そして、その道が正解かどうかはわからないからこそ悩みが尽きないのだと思います。
今回はその方法が小学校受験でした。それは親のエゴなのでは?、色々な事を我慢しなければいけない子供が可愛そう……と思うこともありました。しかし、正解か分からない中で色々な事に苦悩しながらもそれが子供にとって良いことだと信じて走り抜ける茜の強さは子を持つ親として力をもらいました。結衣の小学校受験が終わった後の仕事も育児も全力な茜は生き生きしており、単純にかっこいいと思いました。
「親にできることって、子供のことを信じるくらいしかないんじゃないですかね」
茜の台詞の一節です。「受験は家族のチーム戦」とも書かれていましたが、受験に限らずどんなことでも子供の可能性を信じて親はサポートしていくことが重要なのだと改めて感じることもできました。
育児や家事、仕事と両立しながら小学校受験に挑む2児の母の奮闘を描いた本作は日々忙しく頑張るお母さん、お父さんに特に強く刺さる一冊だと思います。
是非、読んでみて下さい。
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