こんにちは、ラパンです。
この度は、原田ひ香さんの「喫茶おじさん」を読みました。
本書は57歳、早期退職し現在無職、バツイチで今の妻とは別居中のおじさんが、妻や前妻、会社員時代の同期など様々な人との関わりや喫茶店を巡り思いをはせる中で自身の人生に向き合っていく物語です。
最初はグルメが中心の小説なのかと思って読み始めましたが、読む人のこれからの生き方に非常に刺激を与えてくれる小説で面白かったです!
主人公の松尾純一郎は喫茶店を開業しますが退職金の大半をつぎ込み、あっけなく潰してしまったり、別居中の妻に1ヶ月以上連絡をせず放置していたり、突出してできることもなく正直ダメ人間といってもいいと思います笑💦
ただ、そんな主人公ですがお人好しな所があり、憎めないキャラクターになっています。多くの問題を抱えている主人公ではありますが、少しずつ前に進もうとする姿はきっと応援したくなるはずです。
主人公と似た境遇の人はもちろんのこと、そんなダメダメ要素が多い主人公だからこそ、そうでない人も感情移入しやすいのではないかと感じました。特にこれからの生き方に迷っている人、やりたいことはあっても一歩踏み出せずにいる人にはぐっとくるものがあるのではないかと思いました。
また、物語の中で巡る喫茶店の雰囲気、料理がどれも魅力的でグルメ小説が好きな方にもオススメです。読み終わる頃には喫茶店に行きたくなるかもしれません。
それでは感想を書いていきます。
~作品情報~
題名:「喫茶おじさん」
著者:原田 ひ香
出版:株式会社小学館
ページ数:253ページ
目次
- 主人公の生き方や決断は生きる力や何か始める時の一歩踏み出す勇気をくれるはず!今後の生き方を考えるきっかけになる小説
- 私が読んだ動機
- こんな人にオススメ
- 作品説明
- 主人公を通して自分の人生を見つめなおす…。自分の今後の生き方について考えるきっかけになる一冊
- 人物の感情表現がうまく、グッと物語に引き込まれる
- 読んで美味しい!喫茶店のメニューやコーヒーの表現が素晴らしい、飯テロ要素あり!
- まとめ
1.主人公の生き方や決断は生きる力や何か始める時の一歩踏み出す勇気をくれるはず!今後の生き方を考えるきっかけになる小説
私が読んだ動機
- 原田ひ香さんの「図書館のお夜食」がテレビで紹介されており、以前から気になっていた。こちらの小説も気になったため、購入した。
- 平積みで売られており、注目作品なのかなと思い、読んでみたいと思ったから
- 食べることが好きでグルメがかかわる小説に興味があったから
こんな人にオススメ
作品説明
57歳、早期退職し、現在無職、バツイチで今の妻とは別居中、離婚を切り出されている、喫茶店巡りが趣味の主人公、松尾純一郎。
妻や前妻、会社時代の同期、喫茶店開業教室の同級生の女性、娘など様々な人と話し、関わっていく中で彼は人生について考えていく。
最後に彼が選んだ人生とは?
主人公が巡る喫茶店やそこで提供されるメニューはどれも魅力的でグルメ要素もある。
主人公と似た境遇の人だけでなく、これからの生き方に悩んでいる人、やりたいことはあるが踏み出せない人などそんな多くの人の背中を押してくれる小説。
小説を通して自分の人生を見つめなおす…。自分の今後の生き方について考えるきっかけになる一冊
「あなた(お前/お父さん)は本当に何もわかっていない」
この一言はこの物語のキーワードの1つで、妻、前妻、元会社の同期、娘など多くの人に主人公の松尾純一郎が言われるセリフです。
主人公が様々な人と関わり人生を振り返るなかで、自分がどれだけ恵まれていたか気づき、どのように生きていくか考え、前に進んでいきます。
57歳にしてバツイチ、無職で何か特別にできることもない、決してうまくいっているとは言えない等身大の主人公だからこそ、少しずつでも前に進もうとする姿は「がんばれ」と応援してしまいましたし、逆に「いつからでも自分の考え次第、行動次第で人生は豊かにできる」と励まされました。
また、「人生何とかなる」、「一度きりの人生、自分のやりたいことをして楽しもう、いつからでも遅くない。」と背中を押され、これからの生き方についても考えさせられました。
ビジネスマン、早期退職されて無職の方、離婚した方など主人公と同じ境遇の人だけでなく、これからの人生に少しでも不安がある方、生き方に悩んでいる方など皆に刺さると思います。
人生を振り返るきっかけとなり、より前向きな未来を考えることができる一冊だと思うため、非常にオススメです。
人物の感情表現がうまく、グッと物語に引き込まれる
著者の原田ひ香さんは「三千円の使い方」、「図書館のお夜食」など様々な小説を書いています。その中で「図書館のお夜食」も読み、感じたこととしては会話や情景描写から人物の感情表現を描くのが非常にうまいということです。そのため、登場人物に感情移入しやすかったり、イライラや寂しさがリアルに感じ、物語にグッと引き込まれました。
本書の中で特に好きな「以前主人公が喫茶店を開業した時に雇っていた斗真という青年と娘の亜里砂が付き合っており、その2人で京都に旅行に行っている疑惑があり落ち着かないシーン」を実際に紹介します。
「ーママから聞いたんだけど、明日から旅行するんだって?どこに行くの?
最初から、こうすればよかった、亜希子なんか巻き込まないで、と思いながら返信した。
しかし……まったく返信は来ないまま、夜になった。相変わらず、既読さえつかない。
純一郎は仕事帰りに、家の近所のスーパーで少し割引になった弁当を買って、自宅で一人さびしくしょぼしょぼ食べた。冷たいご飯とハンバーグがとても固かった。
〔中略〕はあ、と大きなため息が自然に出た。
原田ひ香『喫茶おじさん』株式会社小学館、212,213頁
主人公の純一郎が一人で弁当を食べる様子が目に浮かびますし、さみしさがひしひしと伝わってきます。
他にも純一郎と妻の亜希子との会話の場面で妻がホットドックを食べるシーンも非常に印象的です。心情や情景を感じ取ることができ、より物語にのめり込んでいくことでしょう。
読んで美味しい!喫茶店のメニューやコーヒーの表現が素晴らしい、飯テロ要素あり!
この本の特徴の1つが主人公の松尾純一郎が喫茶店で食べるグルメや飲み物の描写が絶妙に美味しそうなことです。
卵サンドの描写を紹介します。
「食パン一斤をまるまる使ったサンドイッチ。一つが一斤を半分に切った大きさで、たっぷりタマゴのペーストが挟まり、それが二つ皿に並んでいる。上にはさらにこんもりアイスクリームのようにタマゴが盛ってあって、これがまた大量だ。パンに触れると温かくて柔らかい。ふわふわというより、むしろぷるぷるした感じ。〔中略〕―うまいなあ。白身がかなり大きめに潰されているけれど、まったく気にならない。黄身の味が濃い。」
原田ひ香『喫茶おじさん』株式会社小学館、13,14頁
文字で美味しそうと思わせる原田さんの表現力が素晴らしく、他にもナポリタンやあんみつなどの甘味、コーヒーなどのグルメも非常に美味しそうで、お腹が空くこと間違いなしです。
また、どの喫茶店の雰囲気も非常に趣深く書かれており、読み終わるころには喫茶店に行ってみたいな、行きたいなと思う人も少なくないのでは?
後半は家族問題や主人公が今後どういった生き方を選ぶのか、友人の抱えてる問題などによりフォーカスされ、そちらに意識が向きがちでしたがグルメ小説が好きな方は読む価値ありです!
あぁ、おなかがすいてきた…(笑)
2.まとめ
主人公の生き方や決断は、今後どういう人生を送ろうか迷っている人、将来に不安がある人に影響を与え、背中を押してくれると思います。そういった方々に特にオススメです。
読んでいただき、一歩踏み出す勇気や前向きな未来を考えることでより良い人生を送っていきましょう。
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