ジビエの概念が静かに更新された日── レヴォ×レミニセンス、二日限りの饗宴

1.二日間限定の特別なコラボレーション

12月16日(火)、17日(水)の2日間限定で開催された、レヴォとレミニセンスのコラボレーションイベントに参加させていただきました。

アミューズとデザートを除くすべての皿が両店によるコラボレーションで、この日限りの特別な内容。冬のジビエをテーマとしたコースには、雉、狸、月ノ輪熊、仔猪、青首鴨など多彩なジビエがほぼ全皿に使われており、非常に満足度の高い構成でした。

2.ジビエの印象を覆す「澄んだ味わい」

印象的だったのは、すべての皿に共通するジビエの“澄んだ味わい”です。力強さや旨味はしっかりと感じられる一方で、雑味が一切なく、驚くほどクリア。ジビエ特有の香りや味わいが苦手な方、あるいはそれを個性だと捉えている方にこそ食べてほしかったです。ここまで美しく、かつ味わい深いジビエは初めてで、猟師さんや谷口シェフによる丁寧な下処理と管理の賜物なのだと強く感じました。

3.ジビエの可能性は底知れず!

また、そのクリーンな味わいは他の食材と合わせた際にも際立っていました。ジビエの存在感はありながらネガティブな要素が全くないので主張が過剰になることはなく、時に主食材の旨味を下支えし、時に相乗効果を生み出しながら、一皿の中に心地よい余白を生んでいました。ジビエを深く理解し、的確に扱える料理人が手がけるとここまで表現の幅が広がるのかとその可能性を強く感じさせられました。

具体的には、炭火焼きした瑞々しいロメインレタスの一皿に添えられた狸のベーコンは旨味とコクを補強する役割を担っていました。また、「たまゆら琥珀」という卵をメインとした料理で盛り込まれていたトマトのコンソメでしゃぶしゃぶした月ノ輪熊のロース肉は、ヤギチーズやトリュフといった香りや味の強い食材の中でも埋もれることなく確かな存在感を放ちながらも、濃厚になりすぎない、食べ疲れない様な抜け感を生み出していました。

4.攻めの姿勢と多くの要素をまとめるバランス感覚が光る

レミニセンスのスペシャリテである鰻に小熊のタルタルを合わせるなど、既に完成している料理にジビエなど他の食材を合わせる挑戦からもシェフたちの力の入れ方、攻めの姿勢や高い調整力が感じられました。ただジビエを使うのではなく、「どう使うか」「なぜ使うか」が明確な、非常に意義深いコラボレーションだったと思います。

5.[メニュー紹介]ジビエを使う意図や命への敬意、技術力の高さが感じられる料理

prologue

それぞれのレストランが考案した一皿を1品ずつ、3回に分けて提供するという構成。

レミニセンス(以下R):パートフィロの箱に入れた車海老、マンゴー、フォアグラ

パートフィロの薄さ、サクサク感が素晴らしい。

レヴォ(以下L):薄く焼き上げたブリオッシュ生地の上に甘エビ、ピスタチオ

サクサク食感の生地で甘エビの柔らかさがより引き立っている。

車海老はぷりっと感、甘海老はねっとり感と食感が違う2品で冒頭から面白い。

R:キャビアのタルト、トンブリ

パートフィロに引き続きタルトの薄さが芸術的できちんとサクサクしている。キャビアは塩味が強すぎない繊細な味わい。

L:富山の真牡蠣を揚げて燻したもの

熱々で立ち上がる香りが良い。磯の香りと燻した香りが非常に合う。

R:クエのサブレ

サブレとクエの間に恵み鴨のレバーペースト

L:レヴォ鶏

30〜40日間育てた小さなサイズの鶏の中に鶏の内臓や肉を詰めたもの。

上にはマスタードで味付けしたアオリイカ

サクサク感が維持された生地やしっかり温かい温度帯が印象的。アミューズでこの後の料理への期待感がこんなに高まったことはなかったかも。細部へのこだわりや調理技術の高さが感じられた。 

1回の食事会の席数は30席とのこと。レヴォからもスタッフが総出で来ていて人手が多いとはいえ、この客数でこの品質の料理を提供できることに驚くばかりだった。

雉のスープ

葛原シェフが自ら汲んできた天岩戸(あまのいわと)の御神水、富山の野生の雉

レンズ豆をスリ流しのような感じで。

非常に滋味深い。

農福 ロマネリア

愛ふぁーむプロジェクト(しょうがい者の皆さんが作る地産地消のお野菜。その美味しさを知っていただく取り組み)のロメインレタスを炭火で焼いたもの、狸のベーコン、はこべら、シブレット、バジルとエストラゴンの泡

シーザーサラダをイメージ。炭火の香りが香ばしい。瑞々しいロメインレタスにカリッと焼いた狸のベーコンが旨みの下支えをしている感じ。レタスのパリッと感とベーコンのカリカリ感、炭火の香ばしさとベーコンの香ばしさがベストマッチ。

あられのパン

月ノ輪熊(熊の手)

ラビオリ仕立てで包んだもの2種

海苔を練り込んでいない皮、香箱蟹、チーマ・ディ・ラーパ(イタリア原産のカブの菜花)のソース

海苔を練り込んだ皮、藻屑かに、蟹の内子、トリュフ

レミニセンスのスペシャリテ。三河海苔、鰻、小熊のタルタル、ブルーチーズ、チコリ、木の芽

海苔で巻いていただく。鰻やブルーチーズ、熊など味や旨味の強い食材が重なるもぶつかり合っていない。鰻や海苔の味や香りを邪魔しない綺麗な熊。和の要素はありながら食べてみるとフランス料理。複雑さはありながら混沌としていないバランス感が素晴らしかった。

ういきょうを練り込んだ揚げパン

たまゆら琥珀

こはくファームさんの卵の黄身、黒部のヤギのチーズのソース、クルトン、ヤギチーズを揚げたもの、トマトのコンソメでしゃぶしゃぶにした月ノ輪熊のロース肉、トリュフ

卵、ヤギのチーズ、トリュフの相性は言わずもがな。強い味でそれだけでも素晴らしいのだが、トマトのコンソメでしゃぶしゃぶした月の輪熊のロース肉が旨味の相乗をしながらも濃厚になりすぎないような抜け感、余白みたいなものを演出していて熊の要素が加わるとより素晴らしかった。足し算をしながらも引き算がある感じ。この抜け感は肉の脂と赤身のバランスやしゃぶしゃぶという調理法あってこそだと思う。意図を感じる素晴らしい料理で感動した。

料理人のジビエへの理解やセンス、技量によってここまで料理の可能性が広がることにただただ驚かされた。

天然酵母のパン

月ノ輪熊(内臓)

アンドゥイエット風(熊の内臓(胃や横隔膜など)を中に詰めたソーセージ)、キャビアと香茸のソース、ミルクの泡

フォークを入れると肉汁が溢れ出てきて食欲をそそる。臭みを感じやすいであろう内臓も雑味は全くなく、丁寧な仕事、手の込んだ料理が素晴らしい。熊は脂身にフォーカスされることが多いが赤身肉や内臓にも目を向けている点も素敵。

2人の料理人の命への敬意、食材への向き合い方をまじまじと感じさせてもらった一皿だった。

大門素麺

富山の砺波市の大門素麺をアルデンテで。御神水のブイヨンを鹿の血で澄まして。味噌、完熟山椒、蕗の薹のオイル

山椒の香りが良い。澄んだスープとコシのありながら喉越し良い麺が美味しい。

仔猪

スペアリブの炭火焼き、三河みりんと木の実をベースにしたソース、様々なハーブ

火入れが素晴らしい。ぷっくりと膨らみ艶やかな肉はもっちり感があり、非常に歯切れが良い。普段食べている豚肉や牛肉に戻れなくなってしまいそうなくらい味が濃く、雑味がない綺麗な味わい。噛み締めるほどに溢れる旨みに唸りっぱなしだった。素材の力と、それを最大限に引き出す火入れの技術が、はっきりと伝わってくる一皿だった。

青首鴨

炭火焼き。鴨の血のソース、べにはるかのペースト

シルキーな肉質で血の美味しさを存分に感じることができる一皿。仔猪同様火入れが素晴らしかった。

農福サラダ

愛ふぁーむプロジェクトの野菜を使った青首鴨の付け合わせ。バーニャカウダソース

あんぽ柿

レヴォの冬のスペシャリテ。マスカルポーネ、柚子のパウダー

あんぽ柿の甘味、ねっとり感が美味しい。マスカルポーネの心地よい酸味や柚子の香りで後味は驚くほど軽やか。冬らしさと余韻を感じさせるデザートだった。

和栗

レミニセンス冬のスペシャリテ。コーヒーのビスキュイ、マスカルポーネ、白トリュフ

両シェフが一人一人白トリュフを削ってくれる。今まででトリュフで感じたことのない凄まじい香り。

Merry Christmas

ブッシュドノエル フランボワーズ/抹茶のシフォンケーキ/きのこの山、小枝、雪見だいふくを自家製で

6.一本の傘に宿ったあたたかさ…料理だけじゃない、空間やサービスからも滲み出す魅力

サービスも空間も印象的でした。終始アットホームで居心地がよく、常連客とのやり取りや、ノンアルコールペアリングの説明も楽しげで、料理だけでなく空間全体から両レストランの魅力が伝わってきました。

今回はレミニセンスがアルコールペアリング、レヴォがノンアルコールペアリングを担当。私はアルコールペアリングを選びましたが、ノンアルペアリングの「グラスの中でスイートポテトを表現しました!」といった発想や富山に自生するハーブや食材を使ったドリンクに強く惹かれ、レヴォに訪問した際はノンアルコールペアリングも試してみたいと思いました。

退店時、「雨が降っておりますので」と傘を差し出してくださった心遣いにも胸を打たれました。ここまで来て本当によかった、また必ず訪れたいと心から思いました。レミニセンス、そしてレヴォへの思いが、より一層強くなった食事会でした。

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