古典料理を食べて現代を知る~UMAMIHOLIC新年会レポート~

2026年1月18日、UMAMIHOLIC新年会に参加させていただきました。今回の料理テーマは「エスコフィエ以前のクラシックフレンチ」。

林修史シェフが手がける料理は近年つくり手が少なくなりつつある古典料理や、クラシックならではの華やかさを備えたものが多く見られました。

↑林修史シェフ

しかし、それらは単なる古典の再現にとどまらず、「現代的解釈」や「現代的取り組み」が随所に盛り込まれており、その点が非常に印象的でした。

目次

  1. 古典料理の文化を継承しながらも現代的要素を取り入れた料理
  2. 未利用魚を利用する試みも
  3. 過去と現代を往復することで進化するフランス料理
  4. 当日の料理内容

1.古典料理の文化を継承しながらも現代的要素を取り入れた料理

例えば「スープ・ド・ガルビュール」。

「スープ・ド・ガルビュール」はフランス南西部、ガスコーニュ地方を代表する郷土料理で豆や野菜、塩漬け肉などを用い、長時間煮込んで仕上げる具沢山のスープです。寒い時期には主食代わりにもなり、かつては労働者階級の日常食として親しまれてきました。

使用される食材は地域や家庭によって異なりますが、一般的には野菜や豆に加え、鴨のコンフィや塩漬け豚、ベーコンなどの保存肉が用いられることが多い料理です。

今回は魚料理という位置付けで、未利用魚であるブダイを使用。鴨もも肉、白インゲン豆、キャベツなどの野菜をふんだんに使ったスープ仕立てで提供されました。

野菜と肉の旨味が溶け合った滋味深い味わいが印象的で、スープは濁りのない美しい澄明さを保っています。

鴨のコンフィではなく生の鴨もも肉を用いることで、しっかりとした旨味はありながらもより重たさを感じさせません。コースの中の一品であることへの考慮が感じられ、バランスが丁寧に考えられていることが伝わってきました。

2.未利用魚を利用する試みも

また、未利用魚であるブダイを取り入れるというサステナブルな視点も、現代的で非常に興味深い取り組みだと感じました。未利用魚と呼ばれる魚は見た目の悪さや可食部の少なさ、傷みやすさなどを理由に流通に乗らず、廃棄されてしまうことも少なくありません。

林シェフはブダイの熟成香に着目し、処理方法や流通の工夫を重ねることで料理として成立させたとのこと。食材のネガティブな側面ではなく、ポジティブな可能性を見出し活用する姿勢に、料理人としての視点の鋭さを感じました。

ブダイは鱗が厚く、磯臭さが出やすいとされ、敬遠されがちな魚ですが、適切な下処理が施された一皿はそうした印象をまったく感じさせません。身はしっかりとしており、どこか肉を思わせるような食べ応えがあり、とても美味しくいただきました。

3.過去と現代を往復することで進化するフランス料理

視覚的に華やかな牛フィレのパイ包み焼きは、過度な装飾や分厚いパイ生地に頼ることなく、薄く軽やかな生地で包まれ、中の牛肉の火入れも見事でした。

↑焼く前のパイ包み

↑焼き上がったもの

また、出来立てを客前で切り分けるサービスが行われたことで温かい状態のまま提供され、料理の魅力が最大限に引き出されていました。厨房内での役割分担の明確化や視覚を重視するフランス式サービスからより味覚を重視したロシア式サービスへの移行など、随所にエスコフィエの功績を感じ取ることができ、非常に興味深かったです。

↑目の前で出来立ての温かい料理を提供してくださるのが嬉しい。

このように、古典料理と呼ばれる料理は単なる「過去」の遺産ではなく、「過去」と「現代」を往復することで進化し続けているのだと改めて実感しました。古典を正しく理解したシェフが、自身の感性や文化背景、現代の価値観やトレンドを織り込むことで、フランス料理はこれまで発展してきたのだと思いますし、これからも進化を続けていくのだろうと感じます。

こうした古典料理が、今後も大切に継承されていくことを心から願っています。

4.当日の料理内容

アミューズ・フィンガーフード(3種)

・スモークサーモンとブリニ

・パテ・ド・カンパーニュ

レバーの比率が高く、灰色にくすむことのない美しい仕上がり。粒マスタードやコルニッションの酸味が脂を心地よく切ってくれる。

・根セロリと紅玉のレムナード

爽やかで程よい酸味が印象的。

フォアグラテリーヌのブリオッシュ包み焼き

マリネしたフォアグラを牛のコンソメとともにブリオッシュで包み焼きに。フォアグラの脂とブリオッシュの一体感が際立つ。

スープ・ド・ガルビュール

ブダイ、鴨もも肉、白インゲン豆、キャベツなど野菜たっぷりのスープ仕立て。

テット・ド・コション ソース・トルチュ

エスコフィエのレシピを踏まえた再現料理。今回はスッポンと豚頭を使用。

林シェフの師である吉野建シェフのスペシャリテとしても知られるクラシックな一皿。

スッポンも豚頭もゼラチン質が強く重くなりそうなイメージがあったが、適度な酸味をもたせたソースやフレッシュ感がある付け合わせ、ポーション設計により、重さを感じることなく楽しめた。

牛フィレのパイ包み焼き(ウェリントン風)

牛肉に生ハム、きのこのデュクセル、クレープを巻き込んだ構成。

火入れは非常に的確で、ソースは力強さがありながらも重たさを感じさせない仕上がりで素晴らしかった。

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